ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
飛鳥さんのことは、割と早く、シンガポールのテレビ局がすっぱ抜いた。
稀代のプレイボーイを一途な愛妻家へと変貌させたのが、30代の日本人女性だと。
すぐに現代のリアルシンデレラとして世界中から注目を浴びることになり、日本のメディアも総力を挙げて取材を試みたんだけど。
彼らの努力もむなしく、現在に至るまで、そのプライベートはまるで表に出てこない。
理由は簡単だ。ライアンが彼女に関する限り、マスコミを完全にシャットアウトしているから。
その徹底したガードぶりから、一部では、
屋敷の奥に閉じ込めて、鎖でつないでいるらしいとか、
彼女に触れた使用人を病院送りにしたらしいとか、
ネット上で、怪しげな溺愛伝説がまことしやかに流れているほどだ。
飛鳥さんも、さぞ窮屈な暮らしをしてるんじゃないかと、気になってたんだけど――
「飛鳥ちゃんね、今、幼児人身売買の根絶を目指す国際団体のお手伝いをしてるんですって。なんか難しそうでしょ? 実際大変らしいんだけど、すごく充実してるって」
さすが、あいつが選んだ人だよな。
飛鳥さんは飛鳥さんらしく、シンガポールでものびのびやってるらしい。
「ほら、写真も送ってくれたの。たっくんも一緒」
手を伸ばし、受け取ったそれに目を落とす。