ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

――わたくし、総帥ご一家にお仕えしております、門脇麻里と申します。
――あぁ、話は聞いてますよ。

ライアンが日本でスカウトしたっていうスーパー家政婦だろう。


――旦那様は、普段は坊ちゃまの前で理性を失ったりなどなさらないのですが、本日はその、出張から2週間ぶりのご帰国でして、もう奥様も止めようがなく……

――わかりました。メールを送っておきます。確認は明日でいいですよ。今夜はもう無理でしょうからね。


恐縮する門脇さんへ気にしないように言い、電話を切って……オフィスで一人、爆笑したっけ。


オレも携帯の置き場所には気をつけなきゃな、と考えながら写真をひっくり返して……ふっと口元が綻んだ。

そこにはこう書かれてる――「拓人、4歳になりました」。
そう。彼の名前は、拓人(たくと)という。


「まさか、ああいう頼み事だとは思わなかったよな」


つぶやいて、5年前の電話でのやりとりを記憶の底から引っ張り出す。


――拓巳、君にさ、頼みたいことがあるんだけど。


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