ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】

昨日、私がこの部屋に戻るなり、まずライアンがやったこと、それはバンクーバーの実家と連絡をとることだった。

ご両親は事前に彼からこれまでの事情を聞かされていたらしく、パソコン画面の向こうに、とても恐縮しながら現れた。

そして、会社の業績悪化は世界経済の影響を受けてのもので、グループ内の対立とは関係ないって説明してくれた。

その状況も今はライアンのサポートで上向きに転じていること、お義父さんの病気も快復に向かってることなんかも聞かせてくれて、ひとまず安心した。

リー総帥がライアンの本社入りを望んでることは、間違いないらしいんだけど。

今後総帥側が何かアクションを起こしてきても、「無視すればいい」、
「自分たちの幸せだけを、考えればいいから」って、2人は明るく笑っていた。

その後、お義父さんに促されるように、随分薄くなった黒髪を撫でつけた紳士が画面にひょこりと顔を出した。

それが……本物の張理勇さんだった。

――ホント、ビックリ。ツライ、ツライコト、ゴメンナサイ。

本当に彼は、日本語が苦手らしい。私よりも妊婦っぽく張り出したお腹を窮屈そうに折り曲げながら、片言の日本語で、自分の名前が使われたことを嘆き、謝ってくれた。

それから3人とも、私の妊娠に大喜び。

ライアンの通訳を介してだったけど、心から祝福してくれてることが伝わってきて、すごく嬉しかったなぁ。

早く結婚式を、って急かされたんだけど――……

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