ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
車の屋根の向こう。
駐車場を歩いていく一人の男性が見えた。
薄いブルーのストライプ柄スーツを爽やかに着こなした、細身の人。
風が乱した長めの前髪をさらりとかき上げ、眼鏡のブリッジを押し上げる様子が、まるでドラマのワンシーンみたいにキマってて……
どこかで、見たことある人だな……。
そう思いついた途端、忙しなく鼓動が打ち始めた。
まさか。
見間違い……?
ううん、違う。
バクバクと高鳴る音を感じながら。
ごくりと唾を飲み込んだ。
間違いない、それは――張さんを名乗った、あのニセ秘書だった。