ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「大したことなくてよかったですね」
「はい、一人で家にいる時だったらどうなっていたか……ほんとに、ありがとうございました」
おばあさんの娘さんだという女性に、深々と頭を下げられながら、私は病院を出た。
彼女が到着するまで付き添って、さらにお礼にと、病院内の食堂で食事をごちそうになっていたから……もうすっかり夕方になってしまった。
今からニセ秘書探し、なんて無理か。
仕方なかったとはいえ、絶好のチャンスを逃しちゃったかも。
唇を噛みながら、なんとなくこのまま帰ってしまうのも悔しくて。
駐車場をぶらぶらと歩いてみるけど……
当然、それらしき人はいなかった。
もしかして、私を見張ってた、なんてことはあるだろうか。
前にもあったもの。
野球帽の男が、撮影スタジオの前で私のことを伺ってて……
結局数度現れただけで、あれきり姿は見ないけど。
「うーん……」
ぐるぐると考えて出した結論は、私絡みの可能性は高くなさそうだなってこと。
だって彼、まるでこっちに気づいてなかった。
周りを気にするそぶりすらなかったもの。
じゃあ……この病院の、患者だろうか。
けど。
あの時間はもう、お昼を過ぎていた。
今日は土曜日だし、たしかどの科も午後診療はやってないはずだ。