ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
ガクッと後ろにのけぞりながら振り返る。
「えっ、……伊藤、くん?」
去年の事件で知り合った、SD、だ。
今日は、ボーダーのカットソーにスラックスって、まるで大学生にも見えるカジュアルスタイル。
本当にカメレオンみたいな人だなぁ。
密かに感心する私に構わず、彼は小声で言った。
「裏道に車が停めてある。そこまでついてこい」
「ええっと、どうして……」
「お前を連れて来いって、頼まれてんだよ」
「ライアンに?」
私が言うなり、シィッと伊藤くんは人差し指を唇にあてた。
「おしゃべりは後だ。とっとと行くぞ」
彼がチラチラ、マスコミの方を気にしてるらしいって気づいて、嫌な予感がした。
もしかしてあの人たちと、何か関係あるの?
「わ……わかった」
とにかく、言う通りにした方がいいみたいだ。