ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
路肩に停車していた軽自動車の助手席へ私を乗せると、伊藤くんはすぐに車を発進させた。
「あの……どこに行くの? ライアンに、何かあったとか?」
彼はしばらく沈黙し、何かを考えこんでいたみたいだけど……
「まぁいいか」と独り言ち、話し出した。
「明日には全部出ちまうだろうからな。先に言っとく。ライが、パパラッチされた」
「ぱ、ぱぱら、っち……?」
自分とは無縁のワードに、一瞬固まる。
「それってあの、ハリウッドセレブとかが追いかけられるやつよね?」
「そういうやつだ」
「ライアンは、ハリウッドセレブじゃないでしょ?」
「相手がそうなんだよ」
「相手……?」
ギクリとした。
寄り添って歩く、ライアンと黒髪の美女を思い出したから。
まさか……と、息を飲む私の耳に届いた伊藤くんの答えは。
想像とは全く違うものだった。
「イライザ・バトン。知ってるか?」