ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
会わない……方が、いい?
言葉の意味は、わかる。
わかるけど……どうして?
身体の底から黒く、ひんやりとしたものが侵食してくるようで、彼からおもむろに体を離した。
「どういうこと?」
その整った顔を見上げながら、かすれた声を絞り出す。
ライアンは困ったように眉を寄せ、指の背でそっと私の頬を撫でる。
「わかって飛鳥。君までパパラッチの餌食にしたくないんだ。だから僕は、別のホテルに泊まるよ」
「私、そんなの平気――」
開きかけた唇は、長い指に封じられてしまう。
「君は今、君だけの体じゃないだろう? 僕たちはまず、ベビーを守らなきゃ」
赤ちゃんのためだと諭すように言われて、しぶしぶ口を閉じた。
確かに……追いかけられて転んだりとか、トラブルが起こる可能性は理解できたから。
「赤ちゃんのこと、そんなに心配?」
上目遣いに伺うと、ライアンが目をむいた。
「当たり前じゃないか! 何より心配だよ」
迷いのない強い言葉に、ホッとする。
大丈夫だ。
彼はこの子を、愛してくれてる。