ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「……じゃあ、我慢する」
仕方ないと頷くと、落とした視線ごとすくうように、彼の指が私の顎を持ち上げた。
「少しの間だけだから。必ず迎えにくるよ」
そして軽く、唇が触れる。
「ん……」
唇に。瞼に……頬に。
なだめるように優しいキスが繰り返されて。
交差する眼差しの熱さに、いじけていた気持ちがほぐれていく。
「飛鳥……今日、病院行ったんだろ? どうだった?」
「ん。順調だって。とくとくって、心臓の音もちゃんと聞こえた」
「そっか……僕も聴きたかったな」
甘い声に酔いながら……病院?
その単語が、脳裏で閃いた。
そうだ、私……何か伝えることがあったんじゃ……?
「飛鳥……」
むき出しの背骨を撫でるような色っぽいテノールに、ゾクリと煽られ。
迎えるように唇を開き、舌を――……
ハッと瞼を押し上げた。
「ライアン!」