ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
突然叫んだ私に、翡翠の瞳がまん丸くなる。
「な、何?」
そうよ、忘れないうちに言っておかないと!
「あいつのことなんだけど」
「……あいつ?」
「ほら、張さんの名前を騙った、ニセ秘書! 私ね、今日――」
病院であいつを見かけたの、とは言えなかった。
彼の表情から、一瞬にして笑みがかき消えてしまったから。
「飛鳥、ちゃんと言ったよね。君は何も気にしなくていいって」
きっぱりと告げる彼には、さっきまでのマイルドな雰囲気は微塵もない。
その瞳には、有無を言わせぬ険しさだけがあって。
私は言葉を失い、黙り込んだ。
「僕がちゃんと調べて、対応する。だから、君は何も心配しないで。危険なことに首を突っ込んで、ベビーに何かあったらどうするんだ?」
「で、も……――」
「この件に関わってほしくないんだ。君は、何もしなくていい。元気なベビーを産むことだけ考えていればいいんだ」
「っ……によ、それ……」
苛立ちが、ぶわりと胸の内に沸いた。
それじゃまるで、私が何もできないお人形みたい。