ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
廊下からライアンが呼んでいたけど。
ドアに背中を押し付け、ぎゅっと耳をふさいだ。
子どもっぽいことしてるってわかってる。
バカなことしてるってわかってる。自分の年齢考えろって思う。
けど……と、
震える唇を引き結ぶ。
どうしてそんなに、私を遠ざけようとするの?
確かに何もできないかもしれないけど、せめて一緒に考えさせてくれたっていいじゃない。
赤ちゃんのため?
ほんとに?
まるで……妊娠を言い訳に、私から離れようとしてるんじゃないかって、思えてしまう。
――でも実際、周りに脅かされたことあるよ。奥さん妊娠中に浮気するダンナ結構いるから気をつけろって。
違う。
違う、彼は……
壊れたおもちゃみたいに力なく首を振り、ずるずると重力に負けるように座り込む。
彼は、そんなことしない――
rrrrr……
小さな着信音が聞こえる。
ドアの向こうからだ。ライアンの……?