ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「ま、まぁともかく」
気を取り直したように、椅子に腰を落ち着けたマリーさんは、にんまりと私を見上げた。
「ライアン様が、後継者候補の一人であることは、確かだと思います。それが実現すれば、飛鳥様は総帥夫人。素敵ですわね」
「や、いやいや……そんな」
小刻みに首を振る。
彼から総帥になりたいなんて話は、一度も聞いてないし。
それにこんな普通のOLが、トップの妻、なんて。
ありえない。無理に決まってる。
イライザ・バトンみたいな人ならともかく――……
脳裏に、何度もワイドショーで流れた彼女の顔が浮かんだ。
ライアンの髪より色素の薄い、さらさらのプラチナブロンド。
夢見るような空色の瞳、コケティッシュな赤い唇……まるで妖精のように現実離れした可憐な人。
ライアンと並べば、まるでリアルファンタジーのお姫様と王子様。
ため息が出そうなくらいお似合いで……
もしかして。
ゾクリと、背筋へ冷たいものが走った。
「飛鳥様? どうかされました?」
「私じゃダメ……だって、彼が気づいたんじゃないでしょうか」