ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「そんな……」
気遣ってくれてるのはわかる。
でもそんな、蚊帳の外、みたいに言わなくたって……
知らず、むぅっとむくれていたようだ。
「そんな顔しないで」
その口調は、さっきより随分和らいでる。
「飛鳥を、危険な目に遭わせたくない」
暗がりの中、彼が体を寄せる気配がする。
「君にもしものことがあったらと思うと、心配でたまらないんだ。わかってくれるだろ?」
彼の指が、私の耳たぶをゆっくりと弄び。
ゾクリ、と痺れるような感覚が、全身へ伝わっていく。
「それは、わかる、けど……」
闇に慣れた視界に、翡翠の瞳が映る。
そこににじむ、昏い欲情の色も。
用意していた言葉が口の中でかき消えた。
耳から頬、唇へ。
長い指が、焦らすように触れていく。
「飛鳥」
掠れた声が、名前を呼ぶ。
たったそれだけなのに……
抗いがたい熱に煽られて、浅ましくコクリと喉が鳴った。
操られるように、口を開き。
キスを強請るように、ゆっくりと瞼を下ろした。
――けど。