ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】


「う、わ……かぁわいい~!」


親バカ全開だな、ってデレる坂田のことちょっと呆れてたけど。
真っ白なおくるみに包まれ、ベビーベッドですやすや眠る赤ちゃんは、誇張でもなんでもなくて、神聖な空気を感じてしまうほどの穢れなき天使だ。


マシュマロみたいな、もちもちのほっぺ。
さくらんぼみたいな、ぷるぷるのくちびる。

ほんと、かわいいなぁ……
見惚れていると、まるで数か月後を疑似体験しているような感覚を覚えて、ドキドキしてしまう。

そっと自分のお腹に手を当てた。

キミも、こんな風に生まれてくるんだね。
きっと可愛いんだろうな……


「手、こんなにちっちゃい。すごいね、ちゃんと小さな爪もついてる」

「そりゃあるでしょ」って美弥子は笑うけど。
こんな、紅葉みたいなサイズなんだよ?
ほんと、出産って奇跡だ――


「安産だったって坂田が言ってたよ。ほんとにおめでとう」

ギフトを手渡して言うと、美弥子は「ありがとう」と受け取りながら、苦笑する。
「安産だろうとなんだろうと、痛いものは痛いけどね。男にはわかんない痛みよ。2回目のくせに、今回もオロオロしちゃって、こんにゃろとか思っちゃった」

い、痛いのか……やっぱり。

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