ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
その後、カントリー調のインテリアでまとめられた、可愛らしいリビングへ移動。
お茶をごちそうになりながら、ひとしきり出産エピソードで盛り上がっていると。
美弥子が「そういえば飛鳥は」と聞いてきた。
「悪阻大丈夫? わたしなんて、一時期水も飲めなくなっちゃったけど」
「うーん、ありがたいことにね、それほどひどくないの。怠さはあるし、特定の匂いで気持ち悪くなっちゃったりはするけど、それくらいかな」
「特定の匂い?」
「えっと……香水? ……とか」
言葉を濁すと、「そっか、大変ね」と頷かれただけ。それ以上は突っ込まれなくて、胸をなでおろした。
「会社にはまだ言ってないの?」
「うん、部長だけ。今ちょうど新入社員が入ってきてバタバタしてるし、もう少し落ち着いたらかなって」
「営業部にも入ってきたんだ?」
「来た来た、ピッチピチの子」
「ピチピチって死語でしょー」
「えーだってお肌とか、ほんとにキレイなんだもん!」
「あぁわかる! 絶対的に、何かが違うよね。わたしたちとは!」
一緒に笑いながら、部長へひそかに感謝を捧げる。
私が指導に関わらなくていいように、人員配置してくれたのよね。
みんなが気づかないように、さりげなく。