ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
――こちらが、新たに御曹司の恋人と噂されている、シンシア・チェンさんです。二胡奏者として世界的に活躍されてまして、現在は日本ツアーの真っ最中だそうです。お美しい方ですねえ。
「き清香っ! ダメじゃない、早く消して! えっと、リモコンはどこっ?」
慌てふためく美弥子を見て、あぁ、と肩が落ちた。
ライアンの報道を知ってて、触れないようにしてくれたんだな、ってわかったから。
――食事してたってだけでしょ。ただの友達なんじゃないですか? やっぱり本命はイライザ・バトンでしょう。お似合いですもの。ねえ?
女性コメンテーターが、隣席の男性へ話を振る。
――でもチェンさんは、御曹司の昔の恋人だって情報もあるんでしょう? 元サヤってことかもしれませんよ。御曹司自身が何もコメントしないからなんとも言えませんけどねえ。
――どっちを選ぶんですかねー彼は! まぁどっちにしても、私とは縁遠い世界ですけど! あはははは……
はしゃいだ笑い声が、ブツリ、と消えた。
顔を上げると、美弥子がリモコンをテーブルに置くところだった。
「ごめんね飛鳥……顔色、悪いよ。横になる?」
心配顔で覗き込むから、平気、と微笑んでおく。
「シンシアのことはね、前から知ってたから。今更っていうか」