ガラスの靴は、返品不可!? 【後編】
「本気でどなたか、ご存知ないですか? 大河原に合いそうな女性(ひと)。あの人、そろそろ50になるんですよ。その前になんとかって、社をあげて応援してるんですけどね」
「しゃ、社をあげて、ですか……」
地獄のオニガワラ、とかなんとか恐れられながら。
実は慕われてるんだな。
きっとあの、不器用だけどブレない、まっすぐな気性のせいだろう。
なんとなく微笑ましく感じながら、私は「わかりました、探してみますね」と答えた。
1人思い浮かんだのは……サンビバレッジの柴田さんだ。
年齢的にも、たぶん同じくらいだし。
彼女も、学生時代の恋人が忘れられないって言ってた。
そういう想いを共有できたら、親しくなれる、かも?
……とはいっても。
2人とも恋愛にはもう、興味なさそうだし……大河原さんに至っては以前、「余計なお世話だ」って言ってたしな。無理かもしれないけど。
「ありがとうございます! ぜひお願いします」
大げさに感謝されてしまって、今更後には引けない。
サンビバレッジも春フェスの参加企業だったことを思い出し、
紹介だけでも、と心の中にメモしておいた。
◇◇◇◇
樋口さんと別れ、1階の受付で面会証を返却しようとした時だった。
同じタイミングで歩み寄ってきたスーツ姿の男性がいた。
私は「どうぞ」と先を譲ったんだけど――
「飛鳥さん?」
名前を呼ばれ、顔を上げた。
「拓巳さん……」