今あるこの瞬間を…

学食（昼食）

授業が終わると、昼食をとるために僕たちは学食に向かった。僕らがいつも座っている席には光介が待っていた。

「俺たちはいつあいつに抜かれたんだ？」

俊治が不思議そうにつぶやいた。授業終了後すぐに向かったにもかかわらず、学食からもっとも遠い教室の光介が待ちかねたように座っていたのだから無理もない。

「愚問だな。俺は魔術師でもなければ、超能力も使えない。それならば答えは簡単だろう。」

「そうか、お前授業サボったんだな。」

加奈が自信満々に即答していた。

「そんなわけないだろ。ここには学食のおばさんがずっといるんだぞ。たとえおばさんたちが全員いなかったとしても、教師にばれるはずだ。」

俊治が加奈の答えを否定した。俊治が言うように、この学校は授業中も教師が巡回しているため、ばれずに移動するのは不可能に近い。学食のように目立つ空間ならなおさらだ。

「加奈、正解だ。」

光介は笑顔でそう言った。

「学食のおばさん、今日の午後はいないって情報だったからな。しかも教師の巡回も少なかったから容易に抜け出せたってわけさ。」

光介は誇らしげに語っていた。

「すげぇな加奈！見直したぜ！」

「当然だ。少し頭を使えば分かることだ。えっへんだ。」

「馬鹿な…、そんなことありえん…」

「だけど俺はここにいるぜ？」

「ぐっ…、無念だ…」

加奈は素直に喜んでいるが、俊治は驚きを隠せないようだ。確かに今の話なら不可能ではないだろう。だけど光介は、何でおばさんが午後はいないなんて知っていたのだろう？

思えば光介には驚かされてばかりだ。みんなでキャンプに行った時も、天気予報では晴天という情報だったにもかかわらず光介は次の日に順延した。すると天気予報ははずれ、局地的な集中豪雨に見舞われた。光介は体調がすぐれなかったからと言っていたが、今思うとできすぎていたと思う。

その他にも、自分の心が見透かされているかのような発言や、未来が分かっているかのような行動。思い返せば不思議なことがたくさんあったような気がする。