心をなくした女神
別の教室での授業が終わり
教室に戻って教科書やら何かを机に入れ込む。


すると、指にチクッと何かが刺さった。




「いた…」




中を覗くと、血のついた画びょうがコロコロ動いていた。

中指から血が少しでている。


誰かに入れられたんだ。


廊下に目をやると、知らないクラスの女子数人がいた。

私を見てニヤリと笑う。

その子達だとすぐに悟った。



心当たりは一つだけ。




笹野宏太の周りにいる女子達だ。


私に絡んできたから、私に火花が飛んできたのね。

幼稚な人達。




私が立ち上がっていつものように廊下に出ると、女の子たちは急ぎ足で逃げていった。

やらなきゃいいのに。




「あ、いた」

「…笹野宏太」




なんでこんなにもメンタルが強いのだろうか。

目元まで長い前髪をかきあげ、私の目の前までやってきた。


体育だったのか、ネクタイはなく胸元のシャツのボタンがはずされていた。

筋のはいった筋肉がシャツの間から見える。

それに目を向けると、彼は両手で胸元を押さえた。




「渡瀬さんえっち」

「興味ない」




彼はポケットから自分のネクタイを出し、器用につけた。

「はい完璧」と、確認しろというかのように見せてくる。




「今日こそは一緒に帰れる?」

「嫌だ」

「えー、なんで?寄り道しようよ」

「嫌い」



主語も述語もないのに、私の意見は無視して会話を広げようとする。

今まで追い払ってきた男子とは全然違う。




「なんでそこまで私にかまうの?」

「なんでって?」




キョトンとして、彼は首をかしげた。
結局、彼もその辺の男子と一緒だったか…


すると、彼は急に動揺し始める。

意外な反応に、私も困った。




「実は見ちゃったんだ…」


「…え」
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