僕らは春を迎えない
「なにそれきめぇ」
そんで出会って一発目にそれか。
『イメチェンしたら、せめて心機一転出来るかも』
『と言うと?』
授業中そう言って小首を傾げた私に、私のポニーテールをガン見した薮内くんと、今現在半目で私を見降ろす日野の情景が、重なる。
イメチェンと称して挑んだ意識改革の末、ポニーテールからリニューアルオープンしてツインテールにしたのにこれの何がいけないというのか。
薮内くんは可愛いって言ってくれたぞ。ちょっと痛めのアイドルみたいだけどとは補足してたが。
「可愛いだろ。新しい伴侶を見つけたんだ過去の男よ」
「ちょっと何言ってるかわかんないです」
「毛髪寄越せ!」
「血迷ったんかてめぇ!」
貴様の顔なんざ見たくもないわとりあえず毛髪寄越せと、うぎーっと髪に掴みかかったらやめろ、と日野も必死に抵抗する。頭が頭だけに私はもれなくやべーやつだ。
「なんでおれの髪の毛がいんだよ!」
「藁人形に埋め込んで呪うから!あっ言っちゃった」
「バカだろ!バーカ!」
「るっせえ日野のくせに!薮内くんとは大違いだな!」
「そーだそれだよ!」
一気に抵抗の力を込め間合いに入って来た日野にぐん、と胸倉を掴まれる。何すんだとブチ切れかけたら真剣な目に射抜かれた。ほつれた髪がぱら、と落ちて、至近距離で睨まれる。
「お前、薮内から手ぇ引け」
「…は?」
「あいつとは関わんな」
「いや、逆だろ普通!日野には嫉妬とかおれの女に手ぇ出すなとかそういうパワーワードのひとつも」
「真面目に」