僕らは春を迎えない
そしてつかつかと近寄ってきて渡された土産袋。
「足立さんにもはいこれ。おみやげ」
「えっ」
「日野くんとお揃いね」
「えーっ。なにそれあたしらにはなかったくせになんで!?」
「だって日野くんと足立さんおそろで付けるとスッゴイ似合いそうだしー。あとたぶん二人この先ネズミーランドとか絶対行かないと思ってさ」
「えりお前最低…」
「ありがとう鈴木さん。日野喜ぶよ」
「足立さん純粋すぎて神かよ」
─────────
──────
───
「以上回想終わり」
「鈴木どこだあいつ」
「なんで」
どうどうどう、と今にも鈴木さんに掴みかかりに行きそうな日野暴れ馬を羽交い締めにする。これはご立腹なんだな、ともらったカチューシャを日野につけてやろうとしたらでしっと手で弾かれた。
「つけんなばか!なんでじゃねー馬鹿にされたんだぞ多香」
「えっそうなの」
「そうだよ…」
「でも私と日野がさあ、実際にネズミーランド行ったら万事解決じゃね」
「そうだね」
「行こうよ」
「やだ」
「なんで」
「冗談じゃねーあんなの絶対ごめんだね。わかってんのか多香、ネズミーランドってのはリア充の巣窟なんだぞ?お前おれとミッ◯キーやらミニ◯ーのカチューシャつけてうはうはしたいんかよ」
「伏せ字隠せてないよ日野」
「とにもかくにも無理無理絶対むーりー。どのみち金ないし」
日野が怒ったのはてっきりカチューシャを早くつけたかったからだと思ったのに。そんな露骨に聞く耳持たなくならなくたっていいじゃないか。ぷう、と頰を膨らませて、そっぽを向いて机上に突っ伏す日野を横から睨む。そのままげしっと椅子の下をまた蹴ったらすんごい目で睨まれた。