僕らは春を迎えない
 

「もういい!日野なんか知らねーし!嫌いになった!!別れる!!」

「おーおー上等だ俺もお前みたいな色気もクソもない貧乳大根足に嫌気さしてたんだよ清々する」

「ほんとに別れっからな!!今から他人な絶縁な!!」

「はい受理成立、おれたち今から赤の他人」


 ふんっ、とお互いそっぽを向いてふんすと鼻息を出す。ぼろぼろになった制服も髪の毛もそのまま、クラスメイト達を集めていたもんだから、何も知らない担任が教室に入ってきたときはなにごと、と目をぱちくりさせていたのを覚えてる。

 清々した。私もだ。だって別にこっちだって日野とは自然とそうなっただけだし。あわよくば席替えしてさっさとこんなやつから教室の端と端くらいまで離れたいとすら思った。



 でも、私はその昼の出来事をすぐ後悔するハメになる。








「文化祭?」

「はい。校舎の一部改修工事に伴って、本来であれば例年通り秋に予定していた文化祭を大幅に繰り上げて、5月最後の土日に行うことになりました。

 休日に実施することで学外からの参加者も見込めるし、そうなれば地域との連携も取れてうちの学校もより繁栄するかと職員間でも話し合った結果です。

 GW明け早々でみんなには悪いけれど、今日は早速クラスの出し物を話し合ってください」


 気乗りしないえー、というみんなの声はそれでも、楽しいイベントが繰り上げになったことでなんだか嬉々として届いた。

 担任も友だちみたいな若い女の先生で、下からお願いするように言ったからますますそうだったらしい。


< 4 / 40 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop