只今、愛の診察中につき。


色んな情報が一気に入ってきて、頭のなかで整理が全然出来ない。

理事長の孫娘と結婚…

要さんに抱かれたという看護師達…

わたしは……愛人。

……嘘だ。嘘だ。

要さんのところに戻ろう。

要さんの顔を見ればきっと安心できる。

こんなの看護師達の口からでまかせだってわかる。

思うなりわたしは踵(きびす)を返し、要さんの元へと向かった。




ーーーそれが、いけなかったんだ。

走って、程なくして要さんのうしろ姿を見付けたわたし。

「かなっ……!!」

彼の名前を呼び掛けたとき。

彼のしなやかな首に白くて細い腕が絡む。

そして、その腕の主は背伸びをしてそのまま
要さんにキスをしたーーー。

胸までの綺麗な焦げ茶の髪をゆるく巻き
メイクも要さん好みのナチュラルなもの。

とても、とても品がある美人だった。

そんな美人が、わたしを見た。

要さんとキスしたあとわたしを見て、にこりと微笑んだ。


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