只今、愛の診察中につき。


瞬間、解ってしまった。

ーーこの人が、理事長の……

「ーーーーー」

「ーーー」

要さんは自分の首に絡まった彼女の腕をほどき、何か彼女に言っているが、ここからじゃハッキリと聞き取れない。

手が震える。脚も震える。
頭は真っ白で、心は今にも砕け散りそう。

そんなわたしを可笑しそうに指をさして
彼女は少し嗤った。

それに気付いた要さんは勢い良く振り返り
わたしの姿を映したその目を見開いた。

そして、すぐにわたしの元へ駆け寄ろうとして。

わたしは、イヤイヤと首を横に振った。

来ないで。来ないでっ…!

逃げたくても足が言うことをきかない。

その間に要さんはわたしの目の前まで来て
苦しそうな顔で右手をわたしにそっと差し出してきた。

手を、取れと…?

そんな汚れきった手を、取れと…?

呼吸がどんどん浅くなっていって苦しい。

体の震えはどんどん大きくなってゆく。

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