只今、愛の診察中につき。
「そんなある日、道端で小さな女の子がうずくまってたんだ。近寄ると真っ青な顔で脂汗をかいていた。僕は昔母に買って貰った医学書に書いてあった知識をここぞとばかりに思い出して、応急処置をして救急車が来るのを待っていた。その女の子が、さっきの……凛花(りんか)なんだ。そして、その凛花の父親がこの病院の理事長ってわけ」
「……ぇ」
「ん。僕の処置の仕方が良かったみたいで凛花は大事に至らずに済んで。そして僕は理事長に気に入られて、僕の事情を知った理事長は、僕を養子として神楽坂(かぐらざか)家に迎えてくれた。…僕が、立派な医者になれるように沢山援助もしてくれたよ。ーー立派な、外科医になれるようにね」
「外科医…?」
「そっ。理事長がどんなに頑張ってもなれなかった外科医に。理事長の夢を託されたんだよ僕は。僕がなりたかったのは。もっと、違ったのに」
フゥとここで初めて話をくぎった要さんは、
側に置いてあったミネラルウォーターを3口ほど飲むと、また、淡々と話始めた。