只今、愛の診察中につき。

「凛花のことは嫌いじゃないけど、そういう対象としては見られなかった。何度も説明したんだけど、凛花を溺愛していた理事長は耳を傾けてはくれなくてね」

「……それで…?」

「手っ取り早く、周りの看護師の女を片っ端から抱いた」

「…は?」

「結婚前から浮気しまくっている男に、自分の大事な娘を嫁にやる父親なんていると思う?」

「……はぁ」

随分あっけらかんと言い切った要さんに対して何も言い返す言葉がなかった。

いくら結婚したくないからって……
そこまでするか?

わたしの心情を読み取った要さんは困ったように笑って

「理事長も凛花も、なかなか考えを曲げない人間なんだ。そんな奴等の心を折るにはクソビッ○達を利用するしかなかったんだ」

あくまで「仕方がなかった事」だと悪びれなく主張する要さんにため息が出たけど、取り敢えず最後まで話を聞くことにする。

「で、理事長は激怒して僕の希望通り結婚話は白紙になり、神楽坂家からも追い出されたって訳」

「…そんな人がなんでまたこの病院にいるの?しかも外科医じゃなく、精神科医として」

そこがわたしにとって最大の謎だった。

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