只今、愛の診察中につき。
橘叶
…どのくらい、歩いただろう。
外は真っ暗、脚はパンパン。
それに、ここはどこだろう?
あてもなくただボーッと歩いていたから
現在地がまるで把握出来ない。
そして、程無くして目に飛び込んで来たのは
大きな本屋さん。
…あれ?確か、この本屋さんの近くに…
大きな本屋さんの大きな通りの一本奥にある路地を少し歩いていくと、、
「あ。…やっぱり」
静かな路地に似つかわしくない派手な店構えをしていて、ロックな音楽が外にまでもれているここはーー、
『レックス』
叶が勤めているバーだった。
わたし、なんでーー…。
今日は、叶、ここにいるだろうか…?
要さんには、自分が居ないときには会うなって言われているけれど、
そんなのはもうどうでもよかった。
そろぉっと店の窓を覗くけれど
なんせお客さんが多くて叶がいるかどうか確かめられない。
…叶がいてもいなくても
今日はやけ酒したい気分。
でもやっぱりどうしても腰がひけて。
でもでも!いざっ!!
わたしは覚悟を決めてドアノブに手をかけた。