只今、愛の診察中につき。

「…え…」

そこは、叶の部屋は、驚くほど物がなかった。

ベッドにローテーブル、そして音楽プレーヤーがそのまま床に置かれていて。

それだけ、だった。

「なんもねぇだろ、俺んち」

ハハッと笑う彼は小さな冷蔵庫にお酒を押し込めている。

「引っ越して来たばかりなの?」

お邪魔します。と、今更言って遠慮がちにローテーブルの近くに腰をおろした。

「んにゃ。越してきたのは半年ぐらい前」

手洗いを済ませた彼は小さなキッチンで手早く夕飯の準備に取りかかっていた。

「…どうして、」

引っ越したの?と言い終わらないうちに、わたしの言いたいことを察したらしい彼は、

「…まぁ、ハタチになったことだし?独り立ちみてぇなもんかな。特に深い意味はねぇよ」

「そっか…」

本当の理由は別にあるみたいだったけれど、
それ以上は聞かないことにした。

幼馴染みだもん。…何か隠している事ぐらいわかる。




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