只今、愛の診察中につき。


「病室戻ります…っ」

白井先生の腕のちからが緩んだところで
するりと先生から離れ、小走りでその場を後にした。


病室に戻ると小さな洗面所の鏡を見る。

…あ。やっぱり……。

鏡に映ったわたしの
本来なら漆黒である筈のその瞳が
蒼く変わりかけていたーー。

見られちゃった…よね…。

はぁぁーっと深いため息をつき、硬いベッドにダイブした。

普段ならカラコンつけてるからバレることなんてないのに。

人を視るこの蒼眼。

人生を狂わせたこの眼。

ーー今まで何度、くり貫こうとしたか。

「…明日から、ホームレス生活かぁ」

ふふっ、本当に人生のドン底まで堕ちた気がする。

笑ってるのに何故だか涙が止まらない。

どうか明日がゆっくりやって来ますように。


< 14 / 184 >

この作品をシェア

pagetop