只今、愛の診察中につき。

「…響?」

「っっ…!」

落ち着いていて穏やかな要さんの心地よい声。
その声を聞いた途端…言葉を失ってしまった。
伝えたかった事が真っ白になってしまった。

「ひびき?」

「っ…!ごめっ…なさっっ…!」

息が詰まる。呼吸が上手く出来ない。
でも、伝えなきゃ。

「ご…めんっ…な、さっ!…う…ひっ…!」

懸命に謝ろうとしているのに、自分勝手な涙と嗚咽がそれを邪魔する。

「…」

何度も何度も謝るわたしに対して要さんは一言も発しなかった。

「要さん、わ、たしっ!わたし…っ」

「明日、午後1時」

「…え?」

「明日、午後1時に◯◯港の客船搭乗口で待ってる」

「要さ…?」

「来てくれたら橘との事は全て水に流す。…もし、橘に未練があるとか、僕への気持ちが冷めていて時間まで来なかったら、2度と会わない。…それだけ。じゃあ」

「…えっ!要さん!?ちょっと待って…!」

プツッ。
一方的に電話を切られすぐに掛け直すももう繋がることはなかった。

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