只今、愛の診察中につき。
黒髪の短髪に、少しつり気味の目に縁なしメガネが似合っていて、体型は細め。
少し高めの声音がわたしの耳に優しく響く。
「尊さん…!!」
わたしは一目散に元婚約者に向かって走った。
尊さん!尊さん!尊さんっ!
それなのに、
走れども走れども距離が縮まらない。
どうして…っ!?
ついに体力の限界が来てその場に膝をついてしまった。
そんなわたしの目に映ったのは何人ものひとの靴。
ハッと見上げると、尊さんがわたしを冷たい目で見下ろしていた。
尊さんだけじゃなくて、お父さん、お母さん、諒太、叶。
そしてー。先生も。
みんな、まるで汚いものを見るような目でわたしを見下ろしている。