只今、愛の診察中につき。


ハッ!

眼が覚めて異様な迄の心臓の音と冷や汗をかいていること、ここは先生の家で、真っ白な空間じゃないのに、夢と現実がまるで区別がつかない。

わたしなんて要らない。
わたしは要らない忌み子。
生きてるだけで迷惑な存在。

消さなきゃ。
そんな存在は消さなきゃいけない。

そう思うや否や昨晩寝ている間に先生が丁寧に治療してくれたであろう両腕の包帯を勢いよくほどく。

引っ掻き傷や切り傷は古いものから新しいものまで、色を変えて残っている。

傷付けなきゃ。傷付けなきゃ!!

手っ取り早いのは包丁だ。

そう思いキッチンに向かい探すも、なぜかどこにも見付からなかった。

ない。……なんで!?

ないなら仕方がない。次はカッターだ。

リビングにある戸棚を片っ端から荒らして探すもそれもない。ハサミもペーパーナイフもない。

なんで!?なんでよ!!

刃物と言う刃物がひとつもない。
< 39 / 184 >

この作品をシェア

pagetop