只今、愛の診察中につき。
「っっ!!」
右手首を物凄い力で掴まれて握っていたグラスの欠片がカシャンと床に落ちた。
「っ!離してっ!!!」
わたしが持つ全てのちからで抗うもわたしの手首を掴んでいるひとはビクともしない。
「離してよっ!!!」
ちからでは敵わず、けれどありったけの声で叫んで抵抗する。
「響っ!!響、落ち着けっ!!」
誰かが何かを言っている。
それはわかったけれど、何を言っているかまではわからなかった。
泣き叫ぶのを止めないわたしにその人は
「チッ」と軽く舌打ちをしたかと思うと
わたしを強く自身の方へ引き寄せわたしの唇に自分の唇を重ねた。
「んっ…!!……んぅ…!やっ……!」
激しく抵抗してみせてもやはり敵わず
深いキスは何度も繰り返された。
「…や…ぁ……」
繰り返される毎に抵抗する力を失っていくのが自分でもわかった。
わたしの意識が朦朧とし始めた頃、ようやく唇は離された。
そして、涙で潤んだこの目で捉えたのはーー、
「せっ…んせ…」
「響。もう大丈夫だ。僕は、何があっても君を否定なんてしない。響の味方だ。大丈夫」
スーツにはわたしの赤がついていて、
でもそんなのお構い無しでわたしにニコリと優しく微笑む。
まるで、わたしがどんな悪夢を見たのか知っているかのようにーー。
「響……好きだ」
そう言って先生は今度はそっと優しく唇を重ねた。