只今、愛の診察中につき。
「ーー座ってもいいかな。立ったままだと目立つからね」
言うなり僕は彼の斜め前の席に腰をおろした。
そこでハッとした彼は、僕に食ってかかってきた。
「アンタ誰だよ!?響は一体どうしーっっ」
「僕は響の彼氏だけど?」
「なっ……!!」
僕のシレッとした答えに絶句する彼。
「響は僕と結婚前提で付き合っているんだよ。いま一緒に暮らしてもいる。ーーだから悪いけど、君の出る幕はないよ。響にももう君に連絡しないよう言っておくから」
響の名を口にしただけで彼女を抱いた感覚が甦り、今すぐ家に帰ってまたしたくなる。
本当、こんなに夢中になった女は初めてだ。
……病院での仕事もこいつのことも、さっさと片付けて彼女が待つ家に帰ろう
席を立とうとしたら店員がモジモジ「ご注文は、お決まりですかぁ?」と訊いてきたが、僕はそれを無視して店の外を目指して歩こうとした。
「ーー待てよ」
やはりと言うべきか。そんな僕の腕を強く掴んだのは、彼。
橘 叶(たちばな かなう)
だった。