只今、愛の診察中につき。
「……そんなに、」
響のことが好きか。
最後まで言葉にしなかったのは、僕の心に生まれたほんの少しの不安と嫉妬からだった。
「響の所へ連れていけ」
その薄茶色の瞳の奥で燃えているのは響への激しいほどの恋情。
「…僕が、君を家にあげると思うか?」
「場所はどこでもいい。響に会えるなら、どこだっていいんだ…」
切なさに揺れる瞳に男の僕でも思わずドキッとしてしまう。
こんな分かりやすいのとずっと一緒にいたのに
響はこいつの気持ちに全く気付いてないのかよ。
「…わかった。じゃあ、明日の昼にまたここで」
「本当か?」
「残念ながら嘘はつかない性分なんだ」
「わかった」
そう言うと腕を掴んでいた手のちからが抜け、僕はスルリと橘の手から離れると、店の客、スタッフの全員が僕と橘を見ていることも気付かずに店を出た。