キラキラ【完】

それは、ぴったり200秒の動画だった。

知らない間に録画してしまっていたらしい。映っているのは白くぼやけた天井だけ。

何でもない会話をする、わたし達。

なのに……涙が出た。

どうしてだろう。

こんな何てことない時間が、幸せで仕方なかったはずなのに。


「うるせーな。そんなに文句あんなら別れりゃいいだろ?」

「はい、そうさせてもらいます」

「あっそ。じゃあね」

どこで歯車が狂ってしまったのだろう。


震える指で、もう一度、再生ボタンを押す。

『キラキラ光るからじゃない?』

『光る? ウロコ?』

『うん。金色に見えるよね。たまに』

『あー、一瞬ね』

二人で過ごした2年半のうちの、たった200秒。もう二度と戻れない、一瞬。

それは、一瞬金色に光る金魚のウロコのように、確かにキラキラと輝いて見えて。

わたしはまるで子供みたいに泣きじゃくりながら、【削除】ボタンを押した。



~END~

< 4 / 4 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:2

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

Love 【完】

総文字数/1,600

恋愛(その他)4ページ

表紙を見る
壊れそうなほど。

総文字数/67,904

恋愛(その他)195ページ

表紙を見る
偽物の恋をきみにあげる【完】

総文字数/106,472

恋愛(純愛)216ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop