Love 【完】
「じゃあね」
3週間前と同じ台詞を吐いて、彼は背を向け、玄関へと歩き出す。わたしは布団を抜け出し、彼のあとに続いた。
ドアにロックをするためだ。別に、去っていく背中にすがっているわけじゃない。
無言で靴を履いて、ドアノブに手をかけた彼が、ピタリと止まった。
「…………あのさ」
目の前の背中から、低い声。
「……なに?」
「俺……」
そこまで言うと、彼がこちらを振り向いた。きっとお酒が入っているくせに、やけに真剣な顔だ。まっすぐな瞳が、痛いくらいに突き刺さる。
「俺、やっぱ……やり直してーよ」
それは、どうしても欲しかった言葉だった。
「…………ダメ?」
「……」
胸がいっぱいで、言葉にならない。子供みたいに首をブンブン振れば、彼にきつく抱きしめられた。
「お前と別れるとかムリ」
耳元で囁いて、彼はわたしに優しくキスを落とした。
「好きだよ」
うん、わたしも大好きだよ。あなたがいないなんて、無理。