無遅刻無欠席が取り柄の引っ込み思案の透明人間
透明人間から半透明人間へ
さすがに坂道の自転車は辛かった。
俺は一旦駅に戻って自転車を駅の放置自転車群に置いてくることにした。
放置自転車とはいえ、泥棒して無遅刻無欠席を達成しても意味がない。
一駅移動したが、持ち主があらわれなければ、いずれ同じところへもっていかれる。
かなり通学の学生が増えてきた。
俺は下り坂を自転車で飛ばした。
その時衝撃が走り、俺はハンドルとサドルを結ぶフレームに裸の股間を強打し、ハンドルにこれまた裸の胸をしこたま強打した。
「よしっ!捕まえた」
「この自転車、坂道を登って行ったかとおもうと今度は降りてきた」
学生が自転車の荷台を捕まえていた。
俺は激痛で自転車から転げ落ちて歩道の横の壁にもたれた。
学生は、駅前の歩道に並べて駐輪しているスペースの方向へ自転車をおして行った。
雨が降っている。壁にもたれている俺の雨に濡れている部分と血がにじんでいる部分がなんとなく形が見えてきた。
半透明化している!?
ヤバい。俺は痛みをこらえて立ち上がり、雨に濡れている体を両手でぬぐった。
今一度俺は、緩やかな坂道をかけだした。