きみと一から始める私
…………へ?
い、今、なんと?
「斉藤さんに案内して欲しいんだけど、ダメ?斉藤さん」
真っ直ぐにこちらを見つめる曇りなき眼に、その場から動けなくなる。
「何か用があるなら後日でもいいし…ね?お願い」
申し訳なさそうに眉を下げて、その綺麗な顔の前で手を合わせられたら、そんなの…断れるわけなんかない。
「よかった、ありがとう」
頷くと、ほっと安堵したような表情を浮かべる椎名くんに思わずきゅん、と胸が高鳴る。
その代わり、みんなの視線が怖すぎてすぐには顔を上げられなかったけど。
タイミング良く鳴った始業のチャイムの音で助けられた私は、やっと自分の席へと戻れたのだった。