課長、恋しましょう!
「あんま遅くなるようなら、俺のことは気にすんなよ」

「あら」

と、また彼女の肩が跳ねる。やや寝ぼけた眼が、酔っ払った猫みてぇに細くなる。

「少しでも多く課長と一緒にいたいじゃないですか。だったら、一時間や二時間なんてことないです」

「バカ。一時間や二時間は充分問題ありだ」

「そんなことないですよ。こうですね、指を立てて、課長はなにやってるのかな、がんばってるかな、疲れてないかな、なんて考えてると、あっという間です。ちなみにこの行いを指折りといいます」

「んなこたいいんだよ」

思わず、俺ぁ彼女を背中から椅子ごと、抱き締めていた。

「俺もな、男として女待たせんのはどうかと思うんだよ。迷惑かけちまったって、ちぃとは罪悪感あんだ。察しろ」

こつん、と彼女が頭を当ててくる。「えへへー」という笑い。

「じゃあその罪悪感に訴えていいですか?」

「おう?」

「今日、課長のおうちにお泊まり会ってことで。ねっ?」

ひとついいか。

もしもだ、俺だけを見て、純粋に笑ってくれる女がいるとするわな?

そいつをかわいく思えないヤツ……いるか?

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