課長、恋しましょう!
どうして彼女が、俺みてぇなオヤジと付き合うのかはわからん。ちょいワルでもなけりゃ、リッチでもねぇ。裕福なのは財布じゃなくて腹だ。

が、そんな俺でも、なにかしら彼女に与えられてんだろうと自惚れる。だれにも見せてやるつもりなんかねぇがな、コイツん寝顔がかわいいんだよ。

変だよな。もし娘がいたらこれくらいの歳だっつう女に、なんか、微笑ましいもんを感じるんだぜ。それも保護者っつぅあったけぇ感じじゃねぇ。さっきコイツに突っ込んだ男のエゴイズムみてぇに、あっつぃ感情だ。

なんのかんの言うがな……俺もコイツ、好きなんだよ。……この歳になると、純粋な好きなんざ、言えないがな。








「課長~」

と、耳元で甘く囁かれ、度肝を抜かれる。目を開ければそこに、スーツを着こなした彼女。

な、なんでお前が……と言いかけて、いかんいかん、昨日のことを思い出す。

酒は飲んでないのにこのありさまか。どうやら、昨日は酒じゃないもんに酔ったらしい。ちぃとくらくらすら。

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