課長、恋しましょう!
「さあさっ、冷めないうちにどうぞ?」

「おう」

彼女の熱い視線を受けながら、熱い味噌汁を啜る。思わず唸った。

「――っ、あ~……」

「……どうですか?」

「ん、旨い」

「やった! っしゃ! えへへー」

三種類のガッツポーズを決めて、彼女も箸を握る。むむ、それは矢野箸ではないか。おのれ矢野め……まあ、今だけは水に流そう。今度彼女の箸を買わんといかん。


「喜んでもらえてよかったです。課長のために頑張った甲斐があります」

俺のため、な……

「なぁ、なんで、俺なんだ?」

「……? 理由が要りますか?」

「? いや、理由っつぅか……そうだな、理由だ」

「じゃあ、答えは簡単です」

答えは、なんだ?

ただのオヤジ好きか?

俺がお父さんにでも似てんのか?

彼女は微笑む。

「私の、一目惚れです」

「一目惚れ……?」

「はい。そりゃもうズビビッと!」

「かーっ、わっかんねぇ!」

「ええっ、わかんないですかあ!? だって課長、あったかくて優しくてカッコいいのに!」

「うがぁ、俺に当てはまらねぇー!」

「もうっ、わかんないのはきっと、課長がきちんと恋してないからですよ!」
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