課長、恋しましょう!
膨れっ面になった彼女は、握り拳を作った。

「課長、恋しましょう! 私が恋の相手になりますからっ!」

まさか、もうお前に恋してるなんざ、言えるか。こっぱずかしい。

「ダァホっ、こんな歳で恋だなんだではしゃげるかっ!」

「これからも手取り足取り付き合いましょう? 課長の恋のためにっ」

「~~、わあった! じゃあ俺からも提案だ」

「おろん? なんだか素直。なんですか? はっ。朝からはダメですよ!? シャワー浴びたばっかりなんですからっ」

「あほっ」

軽く笑い流す。

「お前、俺のこと課長課長言うだろが。あれダメだ。二人ン時ぐらい名前で呼べ」

「えっ、いいんですか?」

「ああ、課長権限で許す」

「わあい。それじゃ早速。佐倉さん」

「なぜ名字か!?」

「きゃあああごめんなさいごめんなさい! んっん、じゃあ改めて」

箸を置いた彼女が、いつもみてぇに笑う。

「えっ、と……神さん」

「おう、ゆかり」

……

…………

………………

「なあ」

「はい」

「今さら名前は恥ずかしいな?」

「そそっ、そうですね。えへへー、でもやっぱり名前で呼んでいいって嬉しいですね」

俺も、名前で呼ばれんのは嬉しいぞ……なんざ言えるか。
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