課長、恋しましょう!
会社前の玄関へ続く無駄に幅ばかりある階段を昇る。

彼女のほうが、段を追うごとに俺より前へ出ていく。むむ……腰が揺れとる、タイトなスリムスカートの中で尻が……むむ。

「課長!」

「な、なんだ」

俺を数段引き離した彼女が、くるりと振り返った。

薄い桃色の唇が、笑う。

「今私のおしり見てましたね?」

「……」

「見てましたね!」

「おう、なんか悪いか」

歳を取ると、ある程度慣れた相手になら恥ずかしげもなく白状できる。

が、

「見たいなら見たいって、ちゃんと二人っきりの時に告白してくださいっ。課長のえっちッ」

彼女の発言力のほうが、俺の数段上をいっていた。階段でも面の皮の厚さでも上をいくってか。大した小娘である。

恥がないのか、感情表現がストレートなのか……翻弄される俺も俺だ。

「バカ言ってるな、こんなところで」

なにせ、一瞬その二人っきりの時にってのを想像しちまったんだ、こんちくしょう。
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