幼馴染は恋をする
「貴浩、ねえ、いい?」

「…何」

「里英から電話、あんた達けんかした?なんか朝ちゃん、変だって」

「はぁ?朝が元気がないと俺のせいなのか?」

「いいから、ちょっと、電話代わって、はい」

朝の姉ちゃんは朝のこととなると……うちとは大違いだ。凄く心配する。優しいんだけど気にし過ぎだと思っていた。

「あ、もしもし?俺、なんもしてないですから」

「あ、違うよ、佳乃でしょそんな事言ったの。違うから、別にけんかしたとかそんな風には思ってないから」

じゃあ、なんだ…。

「なんかね、私が勝手に元気がないように見えたから、何か知ってるかなと思って」

あー。

「しいて言うなら」

「あ、なんか心当たりあるの?」

「三年だし、卒業が近いから?とかじゃないの」

……あ、これって当たり前のこと、か。

「う、あ、それは、ね。それで?」

「さあ?」

それ以外っていうなら…。

「ちょっと…適当…」

卒業するとあいつと離れ離れになるから、て事じゃないの?それくらいしかないだろ。

「いや、ほらね。朝にも朝の、…居るから」

卒業したら今までみたいに会えなくなる。学校に行ってるだけで同じ空間に居たのに、それすらなくなるんだし。寂しいとか、なるだろ。そういうの考えてんじゃないの?

「二年の子とつき合ってるのよね、貴浩君情報だと」

「まあ、…ですね」

そっちが聞いてくるからでしょ。別に一々報告してる訳じゃないでしょ…。

「じゃあ、それかな…。虐めに遭ってるとかじゃないよね?」

…虐め。…嫌がらせ。

「それはないです」

それは、もう、ない。…終わった。

「…はぁ、だったら良かった。良くはないか彼のことは寂しく思っちゃうよね。あ、ごめんね有り難う。うちの中で気がつかなくて…また一人で抱え込んでたらって思うと。貴浩君、ごめんね。卒業までよろしくね」

「はい、普通に」

「あ、じゃあ、佳乃に代わってくれる?」

「はい。……おい、これ」

「終わったの?」

「うん…」

「しっかりしなさい!」

「はあ?痛っ」

痛いっつうの。女のくせにケツに蹴りとかいれるなよな。……なんだよ。なんで俺がしっかりしないといけないんだ。…意味不明なんだけど。
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