幼馴染は恋をする
ドアが開いた。ライトが当たった。一斉に歓声が上がる。綺麗だと言ってる声がそこここから聞こえて来た。

…綺麗だ。…当たり前だ。俺は朝の親の次に、誰より知ってる。お世辞抜きで今日の朝は一段と綺麗だと思った。元々綺麗だ。だけどその朝を益々綺麗にさせてるのは恥ずかしそうに見つめた先にいるあの人の影響だ。
朝が好きになった人。自分から好きだと言った人。あの人といるからだ。

俺は…たかをくくっていた。朝が好きだと言っていても相手はかなり歳上だ。好きもどこかで途切れるんじゃないかって。
だけど、それが、俺が子供だっていうんだよな。子供の考えの上を行くのが大人じゃないか。だけど恨み言は言えない。柳内さんは俺にちゃんと言ってくれてた。退いたらもらうぞって。そしてその通りになった。シナリオ通りだ。

「おい、ボーッとすんな。綺麗な朝ちゃんを目に焼き付けとけよ。お色直しだってよ」

…はぁ、誠人は元気だな…。

あの頃より大きくなったチビを連れた柳内さんが俺を見て頷いた。すぐ後ろに朝がいた。

朝の手、指先に触れ握った。あ、そんな顔をするな。幸せなんだから、今日は笑う日だ。緊張してるんだな、朝はどうしても顔が強ばるんだよな。

「…おめでとう」

中学の時のあれは、まるで未来を言い当てたみたいな会話だったな。あの頃は朝、ただ漠然としていたのか?
大人になったら結婚できるかなって言った。
俺は……俺が居るだろうって、言った。それは俺だって漠然とした、叶うか叶わないか解らない望みだった。そうなればいいなってくらいの。だけど馬鹿正直にどこかで期待してたんだ。…言質はとったから…。
「うん、有り難う」
…か。
好きな人と結婚できて
「良かったな」。

俺はとうとう、幼馴染とは違う好きが言えなかったよ。
朝…、好きだ。ってね。
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