幼馴染は恋をする
「……ごめんなさい」

それぞれが口々に謝った。だけど、…はぁ。今のは心から謝ったのか?俺の手前、この場を取り繕っただけかも知れないけど…。
朝を取り囲んでいた二年女子は輪を解いて離れて行った。


「朝…大丈夫か?こういうの…」

「大丈夫。ごめん…情けない奴とか思ってるでしょ、黙ってるだけなんて。…何て言ったらいいか、本当に解らなかった」

「ん?」

大丈夫か…。

「こんなんで…」

「…ん?」

「もっと大人になったら…ちゃんと人を好きになれるのかな…」

「あ?」

あ、俺ってさっきから馬鹿みたいじゃないのか。ん、とか、あ、とかばっかりで。
何だ今のは。今は好きとか考えないのか?…解らん……好きじゃない、のか、あいつの事…。まだそんなに好きでもないか、とは思うけど。それとも、大人の好きとは違うって、そういう風に考えて…つき合ってるのか?…解らん、単純じゃないのか?好きか、そうじゃないかだろ?

朝を囲んでいた二年女子は少し離れると何やらこそこそ話していたようだったから、まだ安心はできない。

「大人になって、みんながそうすることが当たり前みたいに結婚して…、その時、私には誰も居なかったりして。だったらどうしよう。結婚って、みんなしなきゃいけないのかな…私って絶対結婚とか無理だと思う」

急に結婚とか…誰か知り合いでも結婚するのか?それとも俺が通りかかるまでに結婚がどうとか、そんな、先の解らない話まであの二年になんかゴチャゴチャ否定的に言われたのか…。
そんなの気にする必要はない。

「はぁ?結婚て…なんだよいきなり。まぁそうだな。……解らん。絶対無理って事はないんじゃないのか?結婚て、したい奴同士だからするんじゃないのか?だから、そうならなくて、したくなきゃしなきゃいいんだよ」

…なんで結婚の話に発展したのか俺には解らなかった。憧れ?夢?…女子の方がそういう事、考える事、多いんだろうって漠然と思った。彼っていっても。……女子は何気に2D好きだしな~。漫画とかアニメみたいなカッコいい奴、中々現実には居ないだろ。あんな男、いないっつうの。

「そうだよね、結婚なんて私…無理無理」

「うん?、あ、うん、間違いないな」

「え?酷~い。ハハハ、…間違いないね…」

「…心配するな」

「え?」

…うっかり口から出た。

「んー、誰もいなかったら、そん時は、…ま、俺が居るし」

「えー」

えーって、な。無駄に傷つくわ。

「フフ、…ハハハ。それってそっちも誰もいないってことになるね…。じゃあ、…その時はよろしくね?」

お。

「…おお」

…任せておけ。仮にだからな。

「あれだよ」

「んん?」

「こんなところに呼び出されたのか、偶然だったのかは知らないが、こういうの、今日が初めてじゃないんだろ?」

「……はぁ。…うん、まあ…」

だよな。

「あいつは…」

こんな事されてるの知らないのか。

「言ってない。こういうの、相手が私だからってことじゃないと思う………多分、同級生の女子に人気があるのは自覚があると思うよ…」

だからって。だから、俺とつき合ったら、こんな事あるって、想定しとけってことか?それアリで、放っておくのか?いや、その考え方違うだろ。それだと無責任過ぎるだろ。責任?そんな、そもそも重い気持ちっていうか、真面目な気持ちでつき合ってるのか?、朝は先に卒業するんだし。もう丸々一年だってない。…残り少ないのに。俺が冷静過ぎるのか。
ただ好きだから好きってやつか…。なんだ、それ。好きならこんな時、勘付いて来いよな。て、いうか、どうなってんだ…。どんなつきあい方なんだ。

「……朝、あのさぁ。急だったじゃん、あいつの事、……本当に好きなのか?あいつは……好きなら朝がどういう目に遭ってるか知ってるはずだ」

様子がおかしいって…勘付くだろ普通。浮かれ過ぎてて気付きもしない馬鹿なのか?

「好きかどうか解らないけどって、返事した……それまで知ってるのは知ってたけど、目立つから。だって、意識した事もないから…。そしたら、急だからそれでいいって。はいともいいえとも言ってない。だけど、何だか…」

まあ、言われたからって好きには…そんな急にはなれないだろ。つき合いながらってわけだ。
……断っても良かったんじゃないのか?…断ったら気まずくなるからか…?。だから曖昧に。承諾した事にもなってないよな…?
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