幼馴染は恋をする
・距離は遠く

封筒…封筒だろ?…。どこだっけ?…確かに持って入って…そうだ。あ、あった。ここだ。…フ。……なんてな…はぁ…。俺ってなんて失礼な奴。下駄箱の上だ。……そうだよ、置きっ放しにしたんだ。知ってる。言われたから探してる体だ。…誰も見てやしないのに…心の小芝居だ。これは初めからここにある。ずっとだ。
これがポストに入れられていた日は、仕事の帰り、バーに寄って飲んだ日だった。

平日は一杯だけだって決めてる。親友とは違う、腐れ縁のようなつき合いになった男、誠人の店だ。また昔話をした。誠人は余程未練があるらしい。中学のまま感情は変わらないままだ。『何かおかしいって何で気がつかないんだ?嫌じゃないって、好きでもないってことだろ?誰だって解るんじゃないのか?勿体ないじゃんその時間がさ。まあ結局別れちゃったけどね』いつも結局同じ話を繰り返すはめになる。中学の時つき合いたかったのなら言えば良かったんだよ、結果はどうだったか…知らないけどな。誠人の気持ちを俺が気づいてたことは知ってたんだろうか…。
終わりのない長話をして、またな、と店を出る。

ふぅ。さして酔ってる訳でもない。だが足取りは軽くはない。一日の終わり、大抵がこんなもんだ。…無気力が増す。

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