幼馴染は恋をする
「おねえちゃん」
「あ、恵和(よしかず)君」
飛びついてきた。
「わ。…お父さんは?」
一人のはずないよね。
「来てるよ。でも、僕が走ったから」
あ。フフ。近くに保育園がある。
「恵和~、こら、勝手に…危ないだろ~」
来てる。
「大丈夫~。フフ、おねえちゃん居たから」
追いついた。
「はぁ、ごめん、驚いただろ。今日は一緒なんだ。出先から直帰するってことで、迎えに行ったんだ」
「そうですか」
…帰るのによね。…私がドキドキしてるって、きっと知らない。
「僕ね、ほら、もう傷治ったよ」
あ、本当だ。貼ってあった場所に絆創膏はなくなっていた。代わりに瘡蓋ができていた。
「もう痛くない?」
「うん、ちょっとかゆい」
「すり傷だったから、あ、掻いちゃ駄目だよ?これは勝手に取れるから」
「うん」
「じゃあ、帰ろうか、恵和」
あ。もう…。がっかりしてることもきっと知らない。
「おねえちゃんがいたら治ったって言いたいんだって利かなくて」
「そうだったんだ。有り難う、良かったね治って」
「うん。じゃあね、バイバイ」
「バイバイ。あ、おやすみなさい」
「うん、じゃあ、おやすみ」
…こんなに心臓が煩いのに…。多分、顔は普通だから。逆に怖い顔になってるかもだ。
「…ただいま」
「おかえり。今日も?送ってくれたの?」
「あ、うん」
「たまには寄ってもらったら?」
「え、なんで?」
「なんでって。そう言われたら別に深い意味はないけどね。ちょっと話して帰ってもいいじゃない?」
嘘。きっと、私のことで何か聞きたいからよ。
「帰りながら話してるし、毎日会ってるからそんな…話す事もなくなっちゃう」
「そうね。……大丈夫?」
「何が?」
「何がって…」
心配してるのは解ってる。
「送ってくれてるし、一緒だから、大丈夫だよ」
「…そうよね」
大丈夫だって言ってるのにまだ噂の方が気になるんだ。
「私、思われてるような目には遭ってないから。変な噂、信じないで。…そんな事あったら言うから」
「朝…。うん、大丈夫ならいいのよ、でもね、心配だから。言えないことがあるんじゃないかって、心配で…」
「そんな事はないから。だとしたら交番に行くから」
言えない事はあるけど。…おまわりさんは必要ない。