幼馴染は恋をする
・私は違う
はぁ。
着替えもせずベッドに突っ伏した。
……そんなんじゃない。変なことされたとか、変質者とか、違う。ただの普通の男の人だよ。
ちょっと一緒に居たからって、…そんなの見て、どうして変な風に勘ぐるの?みんな物の見方、考え方、おかしいよ。
知らない人が信じられないって気持ちは解るけど。
そんなんじゃない。
あの人は、恵和君のお父さんで、バツイチで、一人で頑張って恵和を育てている人。そういう人。
……。
階段を駆け下りた。
「お母さん!」
「わ、あ、もぅ、びっくりした。何?」
「私、……高校は行くけど、大学は行かない」
「え?急にどうしたの?大学、行けばいいじゃない。いきなりどうしたの。やりたい事でも出来たの?」
…。
「……解んない」
「ぇえ?解んないって…。じゃあどうしてそんな事言ったの?」
「解んないけど、……結婚したいから」
「え?!ちょっと。何言ってるの、いきなり。ちょっと…どうしたの?」
…。
「それだけ」
「あ、ちょっと!朝、朝?」
また、階段を駆け上がった。
ドアを閉め、もたれた。ドキドキしてる、私、何言っちゃったんだろう。余計心配させたかも。
変な噂の人…何か、打ち明けられないような事をされて、…妊娠でもしたんじゃないかって。大変なことになってるって思ったかも。そこまでは思わないか。でもあんな事、言ったから…。色々と考えさせちゃう。
あ……大変。お父さんが帰って来たらきっと…。家族会議になっちゃう。
また、駆け下りた。
「お母さん」
「わっ、もう何。朝、ちょっと、変よ。さっきの、何?朝…あのね結婚てどういう…」
あー、ほら。結婚がって、悩ませちゃってる。
「あー。私、遠慮してるんじゃないから」
あ。
「…と、も。遠慮って…、だから行かないって言ってるの?」
「行きたかったら行く。そう決めてたよ。だから、……遠慮して、……早くこの家から出ようとか、そんなんじゃないから」
「朝…」
「それだけ」
「あっ。朝、待ちなさい。まだ話…」
一方的に言って、また駆け上がった。
はぁぁ。……また…これは尚更変な事を言ったかも知れない。これは、言ってはいけない事だ。
お母さん、ごめんなさい。全然そんなつもりじゃないの。